早期大腸がん内視鏡治療の問題点

早期大腸がん(粘膜にとどまるがん)はポリープとして内視鏡的に切除することができます。
粘膜内がん(mがん)ではリンパ節への転移をきたす症例は皆無といわれており。ポリープ切除術
のみで治療は完了します。

ところがそれより深く粘膜下層への浸潤(smがん)によりリンパ節転移の危険性が生じ、その程度に比例して危険性が増大することが知られています。

smがんでも浸潤の深さが1000μmに満たなければリンパ管、静脈などへの侵襲の有無を問わずにリンパ節転移は報告されていません。したがって粘膜下層浸潤1000μm未満は内視鏡治療ですみますが、それより深い場合は手術療法の追加が必要になることが多くなります。


切除に成功しても顕微鏡による深達度診断により評価は変わってきます。

粘膜下層までの深さのがんは早期がんの範疇に入ります。一般的にはその病変の深さ(粘膜下層に
およぶ距離)が1000μm以内では上皮内がんとして切除すればただのポリープと同じと考えてよろしいでしょう。
しかし粘膜下層といえどそれ以上の深さに達している時は
リンパ節転移の可能性が10%、10人に一人の割合であるといわれます。
日帰りで切除可能な比較的小さなポリープでは内視鏡所見のみでその病変の深さを判断するのは難しいといえます。

顕微鏡の診断結果のみで外科手術(腸の切除とリンパ節のクリーニング)の是非を判断するのは難しいと
考えられます。なぜならそれは10人のうち9人の方では不要な手術となるからです。

がんの悪性度、血管やリンパ管への浸潤の有無そして年齢などを総合的に判断するのが臨床医に問われる
課題だと思います。










粘膜内(m)がんの切除例

粘膜下層(sm)がん

1.あきらかに深く浸潤している例

表面が短波調の観察上塑造で緊満感のあるポリープです。茎があり切除可能と判断してポリペクトミーを施行しました。
直径7mと小型でしたが顕微鏡所見で腺がんであり取りきれていました。
しかしがんはポリープ表面から3120μmの深さまで及んでおり、中等度に癌組織が粘膜下に浸潤していること
や年齢が42歳と若い方なので外科手術の適応と考えました。ちなみに手術の結果ではリンパ節転移はありませんでした。

2.軽度に粘膜下層まで浸潤している例

比較的表面がスムースですが分葉したくびれのある直径10mmのポリープです。
顕微鏡では粘膜内にとどまるがんで治癒切除となりました



直径7mmと小さいが出血しやすく表面塑造なポリープです。切除したところ粘膜下層1300μmまでおよぶ
がんとの病理所見でした。83歳と高齢でありご本人の希望で経過観察をすることになりました。
2年を経過して再発の兆候は認められません。