日常よくみる大腸の出血性疾患

出血性大腸憩室症

大腸憩室症とは大腸の内壁の一部が外側に向かって袋状にとびだしたものです。内視鏡でみるとくぼみのようになっています。
憩室の数はさまざまで、頻度は年齢とともに増加しますが、大腸検査を行うと10人に1人くらいの頻度で見つかります。
腸管の内圧の上昇に伴い大腸壁の筋肉層の弱い部分(たとえば血管などが腸壁を貫いて筋層が弱くなっている部分)から
粘膜が脱出して憩室が生じると考えられています。

大腸憩室は炎症の原因(憩室炎)となるほかに、しばしば急性の出血を起こすことがあります。胃の潰瘍出血のようなショック
症状まで至る重篤な例はあまりありませんが、「おしっこのように肛門から血が流れ出る」と驚いて駆け込まれる方が多くいます。

緊急内視鏡検査では止血していることが多いですが、疑わしい部分はクリップを使って内視鏡的止血術を行います。

食生活が欧米型になってきたため最近外来でよく遭遇するようになりました。

以下は実際の出血例です



大腸憩室が左側結腸に多発しておりそのうちS状結腸に一箇所出血を認めました。
にじみ出るような出血が憩室からみられます

止血クリップを4本かけて出血を止めることができました






海外旅行の増えた現代では比較的よくみられる大腸炎です。イチゴゼリー状の血便で発症することが多い。
内視鏡ではタコイボのような周辺が赤く縁取られ中央に汚い白苔を有する小潰瘍が多発します(百目潰瘍)。
病変は直腸と盲腸周辺に見られるのが特徴です。生検でアメーバ原虫を認め確定診断となりますが、
それを待たずに抗菌剤を服用すれば一週間ほどで治癒します。
ちなみに三十年ほど前は潰瘍性大腸炎の劇症型と見紛うほどの重症例を経験したこともありますが、
医療アクセスの進歩した今日ではそこまで悪化することはなくなりました。

これも炎症性腸疾患のひとつで若い人に好発する難病です。写真のように縦に並ぶ不整形の小潰瘍、さらには
敷石状の盛り上がり(肉芽腫)が特徴です。国内での罹患されるかたは3万人を超えるといわれています。

以前は有効な治療法がありませんでしたが、最近は強力な炎症抑制作用をもつ抗TNFα抗体の登場により寛解を導くことが
できるようになりました。

アメーバー大腸炎

日常診療で比較的よくみられる大腸炎です。特徴として女性に多く罹患部位が左側の下行結腸を主体とすることです。
原因は不明のことが大部分です。

急激な腹痛とトマトケチャップ状の粘血便で発症します。内視鏡上羊歯の葉状の赤い潰瘍をつくります。ひどくなると
写真のような縦長の潰瘍をとなります。通常は絶食安静でひとりでに治りますが、本例では腹膜炎の危険性があり短期間の
入院を病院にお願いしました。

虚血性大腸炎

このページでは日常外来でよく遭遇することのある下血(血便)をおこす大腸の疾患をいくつか提示します

潰瘍性大腸炎

クローン病

抗生物質起因性大腸炎

炎症性大腸炎の代表的なもので厚生労働省から難病の扱いとなっており2012年度には全国で13万人を超えるといわれています。
左は急性期の代表的な内視鏡所見で、粘膜の広汎な浮腫、混濁、ただれ、そして膿の付着による塑造化が特徴です。

右の画像のように慢性期には脱落した粘膜の一部に島状に残った粘膜がとびだしてみえるため,仮性ポリープまたは
偽ポリープと呼ばれることもあり潰瘍が治癒した後も存続することがあります。

以前は生命にかかわる重篤なケースもありましたが、早期発見、早期治療で寛解状態を維持できることが多くなりました。

抗生物質特にペニシリン系の薬剤を服用すると発症することが多い大腸炎です。主として嫌気性菌クロストリジウムによる
偽膜性大腸炎の頻度が高いようです。抗生剤服用から1〜7日後に腹部膨満、下痢、粘血便で発症します。内視鏡では光沢
のみられる鮮紅色の粘膜の浮腫(むくみ)が特徴です。炎症反応が症状に比べて存外と高い値を示すのが特徴です。
院内感染のひとつとして考えられてきました.
最近ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法で高容量のペニシリン製剤を使用するようになり外来でも散見されるようになりました。
感受性のある別の抗生剤ですみやかに軽快治癒するのが特徴です。